RhopH複合体は、申請者らが遺伝子を同定し、原虫側リガンドであることを明らかにした赤血球侵入型マラリア原虫の先端部小器官分子であるが、本研究は、その赤血球側レセプターの同定を目的として実施した。昨年度までに、連鎖解析の手法により、レセプター候補分子がマウスの第11染色体に局在することを見出したが、今年度は、さらに領域を狭め、候補分子について生化学的なレベルでの解析を試みた。第11染色体のみが組み変わったコンソミック・マウスからバッククロス群を作成し、個々のマウスについて赤血球結合アッセイを行った。結合形質と遺伝子型とを比較しQTL解析を行ったところ、第11染色体上の15cMのサイズまで標的遺伝子領域が絞られた。この領域に存在する282の読み枠中には、赤血球表面に局在する主要な蛋白質が存在した。この蛋白質はマラリア原虫の他のリガンドのレセプターとして報告されているが、RhopH複合体がCo-Ligandとして作用している可能性もある。一方、生化学的にレセプターを同定するため、大量のRhopH複合体を特異モノクローナル抗体を用いて精製し、ホルミルセルロファインを担体としたアフィニティーカラムを作成した。低張溶液にてヘモグロビンを除去した赤血球膜から、界面活性剤を用いて膜蛋白質を抽出し、RhopH複合体カラムにて精製を行い、コントロール・カラムを用いた精製物と比較したが、RhopH複合体カラムでのみ精製される特異的なバンドは見出すことができなかった。 熱帯熱マラリア原虫の赤血球結合蛋白質の網羅的同定を行うため、Hisタグ付き組換えタンパク質をコムギ胚芽無細胞蛋白質合成系で少量スケールで発現した。赤血球結合アッセイを行ったところ、全ての赤血球が凝集し、使用したコムギ胚芽抽出液中には赤血球を凝集するレクチン成分が含まれることが分かった。この問題点を回避する方法論を構築した。
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