マラリア伝搬阻止ワクチンは、それ単独でマラリアの流行を抑制できるのみならず、現在開発中の他種のマラリアワクチン及び治療薬に対する新たな耐性原虫の拡散を阻止できる点で、カクテルマラリアワクチンの必須の構成成分と考えられている。ところが、現在までわずかに4種類の候補分子が研究されてきたのみであり、未だ実用化に至ったワクチンは無い。一方、熱帯熱マラリア原虫のゲノム情報が2002年に公開され、生殖母体期に特異的に発現するタンパク質の中に新たな伝搬阻止ワクチン候補抗原が含まれていると予想されている。しかし、既存の方法では熱帯熱マラリア原虫タンパク質のゲノムワイドな発現は困難であった。そこで我々は、愛媛大学で開発されたコムギ胚芽無細胞タンパク質合成法を用いてゲノムワイドに発現した熱帯熱マラリア原虫生殖母体期の組換えタンパク質と流行地の患者血清とを用いて、新規の伝搬阻止ワクチン抗原を同定することを目的に本研究を実施した。熱帯熱マラリア原虫生殖特異的cDNAを約190種類を鋳型に用いて、本研究年度内に合計120種類の生殖母体特異分子を組換えタンパク質として発現し、生殖母体タンパク質アレイを作成することに成功した。また、タイのマラリア患者から伝搬阻止活性を有する血清を入手した。次に、伝搬阻止活性を有する患者血清を用いて熱帯熱マラリア原虫生殖母体タンパク質アレイをスクリーニングしたところ、これまでに15種類の生殖母体タンパク質が新規ワクチン候補抗原として選択された。
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