サイトカイン・サイトカイン受容体ネットワークは、感染をはじめとした様々な異物に対する免疫反応の形成に重要である。申請者らは、WSX-1(IL-27受容体)欠損マウスを作成し、このマウスがIFN-γ産生の低下を伴ってリーシュマニアに易感染性を示すこと、およびWSX-1のシグナル伝達経路を明らかにし、IL-27/WSX-1がIL-12よりも早期にTh1/2分化を決定づける重要なものであることを示してきた。本研究では、IL-27の持つ炎症抑制作用をさらに解析し、IL-27欠損により、モデルマウスにおける喘息の増悪、結核菌感染における全身の炎症の増悪を報告した。一方で、IL-27欠損によるTh1分化抑制作用に関しては、炎症性腸炎のモデルマウスにおける症状の改善などの結果を見出し報告した。ヒトのSLEのモデルであるMRL/lprマウスにおいてWSX-1を欠損させたところ、通常観察されるびまん性増殖性糸球体腎炎ではなく、膜性腎炎の発症が観察された。膜性腎炎を自然発症するマウスの報告はこれまでに無く、本研究により、世界初の膜性腎炎のモデルマウスが確立され、今後腎炎の発症機序の研究や治療薬の開発に資するものと考えられる。IL-27のもつ二面的な役割の分子機構を明らかにする目的で、受容体のシグナル伝達経路を解析し、Th1の分化ではSTAT1の活性化が、サイトカイン産生の抑制にはSTAT3の活性化が重要な役割を果たしていることを見出し、その詳細な解析を行っている。
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