研究概要 |
プリオン株間干渉現象の解析:多くのウイルス感染同様、プリオン感染においても株間での干渉様現象が動物実験では古くから知られている。しかしIn vivo実験では免疫系の関与は否定できず、真に病原体間の干渉が起こっているのか不明である。Fukuoka-1感染特異的に出現するPrPのC末断片(以下C-13と記す)を指標に、スクレーピー株がFukuoka-1株の感染を干渉するかどうかを培養細胞感染モデルを用いて検討した。その結果、Ch/RML先行感染はFukuoka-1の感染を干渉せずCh/RMLパターンに新たにC-13を認めた。一方22LではC-13は認められなかった。この実験から異なる株間で感受性細胞への感染が組み合わせに依っては干渉されることが示唆される。さらにPrPres低産生CJ株(SY株)の感染GT細胞を用い同様の実験を行った。この細胞に22L、Ch、Fukuoka-1の感染を試みたところ、SY株は不完全ながらも22L、Ch/RML,Fukuoka-1の感染も阻止することが分かった。GT/SYにはほとんどPrPresが検出されないため、PrP以外の分子が干渉に関与する可能性がある。 マウスBSE持続感染培養細胞系の樹立:BSEはその宿主域が広いことからも極めて特殊な性質を持つプリオン株であるが、いまだ感染細胞モデルは確立していない。マウス細胞での感染系を樹立するため、我々は英国BSEを接種後発症したマウス脳乳剤を用いてGT1-7細胞へのin vitro感染を試みたところ、10継代以上、継代培養した細胞でもPrPresの産生を認め、また抗PrPres薬剤投与によってそのシグナルが減弱することから、確かに持続感染が成立したものと思われる。
|