寄生虫感染における宿主の免疫抑制現象は古くから知られ、ワクチンによる感染症克服にとって重要な問題であることが指摘されている。研究代表者らは、肝臓に局在するNKT細胞の亜群(NK1.1^-CD122^+CD3^<int>)がマラリア感染防御機構を担うことを、CD1d欠損マウスやヌードマウスでの感染系や細胞移入実験で明らかにし、狭義のNKT(iNKT)細胞に分類されない細胞群も感染防御に関与することをすでに報告してきた。一方、肝障害モデルマウスやヒト肝疾患患者検体の解析から、肝NKT細胞は樹状細胞(DC)により負に制御されることも明らかになってきている。本研究では、マラリア感染防御能の増強とは相反する現象である免疫抑制機構を解明するために、ネズミマラリア原虫感染マウスの肝と脾DCの性状解析を行い、NKT細胞との関連性を検討した。 正常マウス肝ではplasmocytoid DCの抗原(PDCA-1)を強発現するCD11c^<low> ClassII^-DCが、脾ではPDCA-1抗原陰性のCD11c^<high> Class II^+DCが優位を占める。肝DCは脾DCと異なり、外来抗原やアロ抗原提示能が低く、形態学的にも未熟型を示した。ネズミマラリア感染初期(Day 7)において、肝及び脾のCD11c^<low> ClassII^-DCが著しく増加し、co-stimulatory分子であるCD86の強発現が認められたが、PDCA-1抗原の発現は明らかに低下した。しかし、肝及び脾のCD11c^<high> ClassII^+DCは減少するもののPDCA-1抗原の中程度の発現が認められた。Day 3(parasitemia<1%)での解析ではこのような変化は認められていない。これらの結果から、マラリア感染に伴ない肝局在のIFNα/βを産生し免疫系を制御するplasmocytoid DCのpopulation変化が明らかになり、このことが肝NKT細胞の活性化に関与する可能性が示唆された。
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