NK細胞はウイルス感染防御において、またNKT細胞はマラリア等の寄生虫や結核菌などの感染防御において、重要な役割を担っている。そして、これら自然免疫系に属する細胞は獲得免疫系より早く分化し、獲得免疫系の成立以前の感染防御機構の中心をなすと考えられている。しかし、NK細胞の分化には出生後2週間近くかかるとされ、この期間の生体防御に関しては不明な点が多かった。今回、胎生時からNK細胞が存在し、このimmatureなNK細胞は、adultマウスに存在するmature NK細胞に比べperforin依存性の細胞傷害活性は弱いものの、TRAIL依存性の細胞傷害活性を強く示すことを見出した。これまでの研究で、NK細胞に発現するTRAILが、生体内でのウイルスの除去において重要な役割を担っていることが示されている。そして、脾臓においてNK細胞は速やかにmature NK細胞へと分化しTRAILの発現が見られなくなるのに対し、肝臓では一部のNK細胞はTRAILを発現したimmature phenotypeのまま、adultマウスでも存在し続けることを明らかにした。これまでNK細胞は自己に対する抑制性NK細胞レセプターにより制御され、自己の正常細胞を傷害せずに、選択的に感染細胞を傷害するとされてきた。しかし、この研究の結果により、若年期においては、NK細胞は抑制性レセプターによる制御のほかに、TRAILの正常細胞は傷害せずに感染細胞を選択的に傷害するという特性により、正常細胞を傷害せずに感染細胞を傷害し、生体防御に寄与していることが示された。一方、NKT細胞の活性化には、補助シグナルであるICOSが重要な役割を担っていることを示し、NKT細胞の機能発揮に関与する新たな分子機構も示した。これらの結果は、感染予防および感染症の治療に早期に応用可能な基礎的知見である。
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