研究課題/領域番号 |
16017293
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
岩渕 和久 順天堂大学, 医療看護学部, 助教授 (10184897)
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研究分担者 |
小林 俊秀 理化学研究所, フロンティア, リーダー (60162004)
大和田 明彦 順天堂大学, 医学部, 助教授 (80233295)
柳田 光昭 順天堂大学, 医学部, 講師 (80365569)
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キーワード | 好中球 / ラクトシルセラミド / 非定型抗酸菌 / マイクロドメイン / 食胞形成 / スフィンゴ糖脂質 / 貪食 / 蛍光標識 |
研究概要 |
目的: 本研究は病原性抗酸菌の食胞形成回避の分子機構におけるLacCerの役割を明らかにすることを目的にしている。 本年度の成果: ヒト好中球とDMSOで好中球系細胞に分化させたHL-60細胞を用いて、オプソニン化していないザイモサンとMycobacterium avium complex(MAC)の食胞形成過程を可視化してリアルタイムに観察し、食胞を分離してラフト画分を調製することができるようになった。その過程で、DMSOで好中球に分化したHL-60細胞は貪食能が極めて低いこと、細胞膜上に炭素数24の脂肪酸鎖を含むLacCer(C24-LacCer)を発現しておらず、C24-LacCerを細胞膜に取り込ませることで、菌の取り込みが好中球並に上昇すること、好中球の初期の貪食過程は菌の種類によらないことなどが明らかとなった。一方で顆粒膜上にあるSrc family kinaseのHckがLacCerとリピッドラフトを形成していること、食胞へリソソームが融合する過程でHckのリン酸化がおこり、MACがこのリン酸化を阻害し、LacCerと会合するHck量が減少することが明らかとなった。また、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、好中球やC24-LacCerを取り込ませたHL-60細胞の食胞形成過程を観察したところ、MACの食胞にはLacCerが集積するが、ザイモサンの食胞にはLacCerの集積は認められなかった。 考察: これまでに好中球の顆粒膜上に存在するSrc family kinase分子であるHckが食胞の成熟過程に重要な働きをしていることが報告されている。本研究で得られた結果から、好中球では菌の取り込みと食胞形成に細胞膜上のLacCerが重要な役割を果たしており、その初期過程である食胞形成はザイモサンとMACに差異がないと考えられた。一方で、顆粒膜上のLacCerがMACに集積することでHckとの会合に変化が起こり、HckへのLacCerを介した情報が伝わらず、食胞にリソソームが融合しない可能性が考えられた。 今後、MACがLacCerを菌に集積させているメカニズムを明らかにすることで、新しい抗酸菌感染症予防法の開発に繋がることが期待される。
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