センダイウイルスのP遺伝子から同じ読み枠を使ってC蛋白質として総称される、翻訳開始点を異にする4つのC'、C、Y1、Y2蛋白質が産生される。今までの研究から、C、Y1、Y2蛋白質には、いずれも単独でインターフェロンによる抗ウイルス作用の発動を抑制する能力があり、それはC'、C、Y1、Y2蛋白質すべてに共通のC蛋白質のカルボキシル末端側半分の100アミノ酸部分にある事が明らかになっている。そこで、これらについて解析するために以下の事を行った。(1)C蛋白質内部の荷電アミノ酸をアラニンに置換した変異体Cm5(151/153/154)を基にP蛋白質のアミノ酸配列を変えない様に再加工したCm*を発現するプラスミドを作成し、HeLa細胞にトランスフェクションしてCm*を恒常的に発現するHeLa細胞株を樹立した。この細胞を用いて、(2)SeV C発現細胞では抗IFN能が発動するのに対して、Cm5(151/153/154)及びCm*置換体では解除されていることが判明した。次いで、(3)この変異をSeV Z株に導入し変異ウイルスSeV/Cm*を作製した。(4)このウイルスがIFNに対抗する能力があるか田舎を調べたところ、野生型SeVは抗IFN能を持つのに対して、SeV/Cm*は、C蛋白質を欠損したSeV4C(-)と同様に抗IFN能を失っていた。(5)IFN抵抗性を失ったSeV/Cm*がどの様な感染動態を示すのかを目的に培養細胞で一段増殖感染実験を行ったところSeV/Cm*変異株の子ウイルス産生量は感染後12時間目から親株に比べて劣っていた。(6)この子ウイルス産生の低下は、IFNシグナル伝達に欠陥を持つ細胞(U3A株)ではみられなかった。
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