ヒトや家畜にとって重要な疾病を引き起こすウイルスを含むパラミクソウイルス科ウイルスのP遺伝子からはP蛋白質の他に機能がよく分かっていない"アクセリー"蛋白質と呼ばれるV、C蛋白質が産生される。近年、センダイウイルス(SeV)のC蛋白質にインターフェロン(IFN)の抗ウイルス作用発動を阻止する能力があることを発見した。そこで、SeVのC蛋白質の抗IFN能力を担う部位の検索し、阻害機構、感染におけるIFN阻害作用の重要性を検討した。いくつかの変異C蛋白質を作製して解析したところ、抗IFN機能はC蛋白質の中央からカルボキシル末端側にある150-170番目のアミノ酸部分が関与していた。この領域は近縁のヒトパラインフルエンザウイルス1型との相同性が高い領域である。C蛋白質の抗IFN能実態は、IFNのシグナル伝達経路として知られるJAK-STAT経路上のSTAT2のリン酸化及びSTAT1の脱リン酸化が阻害してシグナルが核内に伝わらなくする事であった。抗IFNの機能領域を改変し、実験的に拡IFN能を持たないSeVが作製可能である。この事から抗IFN能はウイルスにとって必須機能ではない事が明らかである。しかし、通常SeVがマウスに肺炎を起こすのに対して、抗IFNを消失したSeVはマウスでまったく病原性を示さなかった。以上の事よりSeVのC蛋白質は、個体内で増殖して次への感染チャンスを広げさせるために必要不可欠であると結論した。アクセサリー蛋白質の抗IFN能は、ウイルス進化の過程で獲得しなくてはならなかった必須の機能であったと思われた。
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