研究概要 |
1)アジア型HIV-1組換えウイルスをモデルとする組換えメカニズムの解析(武部・草川班員): 先の研究で、新規組換えウイルス(unique recombinant form, URF)の新生地点として同定した中国雲南省西部(Dehong)に分布するURFのほぼ完全長の塩基配列を決定し、その構造の詳細を解析し、次のことを明らかにした。 a)HIV-1組換えにおけるサブタイプC LTRの生物学的優位性の発見:中国雲南省西部に新生しているサブタイプB'(サブタイプBのタイ型ヴァリアント)とCとの間の新規組換えウイルス(unique recombinant form, URF)の詳細な構造解析の結果、LTR領域はほとんどすべての例でサブタイプCであるにもかかわらず、組換えの最初期過程に関与する2量体形成開始配列(dimerization inducing sequence)は、サブタイプB'とCの両者が使われていることから、組換えウイルスが淘汰・選択される過程で、サブタイプC LTRをもつ組換えウイルスが他のものに対して何らかの生物学的優位性をもっていたことを示す最初の直接的な証拠を見い出した。 b)中国雲南省西部に分布するURFと中国に広く分布する組換え型流行株(CRF07_BCとCRF08_BC)の関係の解明:これらURFがもつ組換え点の多くは、中国に広く流布する組換え型流行株(CRFO7_BCとCRFO8_BC)のそれと同一であり、CRF07/08の起源がこの地域に過去に生成したURFにある可能性を示唆した。 2)in vitroのHIV-1組換え解析システムの開発(椎野・草川班員)。 Long PCR法によって、アジア型HIV-1ヴァリアント(サブタイプB',CRF01_AE,CRF07_BC,CRF08_BC)の感染性の分子クローンを樹立に成功し、in vitroのHIV-1組換え解析システムの開発のためのツールを構築した。overlap extention法によってサブタイプB',C,CRF01_AEの感染性分子クローンのnef遺伝子直上流にGFP,YFP,CFPの3種の異なる蛍光タンパク質遺伝子を挿入。YFPとCFPの間の組換えによってGFPの性質をもつ遺伝子が生成するという性質を用いて、HIV-1組換えのin vitroアッセイ系の構築が進展中である。また逆転写酵素のフィンガー・パーム領域の2群の変異が共同して高度多剤耐性をもたらす系を利用した組換え評価システムの構築を同時に進めている。
|