研究課題
HIV-1スーパー感染:レジデント・ウイルスとスーパー感染ウイルス間の組換えウイルスの急速な出現とその生物学的意義に関する解析HIV-1のプライマリー感染後、血漿中のウイルス量(virus load)はピークに達するが、宿主免疫応答によって、ウイルス増殖は抑制され、virus loadはやがて定常状態(「ウイルス学的セットポイント」)を迎える。この宿主免疫応答が作動している時期(「ウイルス学的セットポイント」に達した状態)で第2のウイルスの感染(スーパー感染)が起るかどうかは、宿主免疫応答の強度、さらにワクチン開発の可能性を試す「試金石」として極めて重要な意義をもっている。われわれは最近、熊本大学(小泉、滝口博士)と国立国際医療センター(岡博士)との共同研究によって、国内症例の中に、異なる系統のHIV-1サブタイプBによるスーパー感染例を同定した。また、この症例において、プライマリー感染のウイルス(resident virus)とスーパー感染した第2のウイルス(superinfecting virus)の間で組換えウイルスが極めて急速に生成していることを明らかにした。これらの知見は(1)第1のウイルス感染によって誘起された宿主の免疫学的応答によって、セットポイントに達していても、第2の(しかも比較的近縁な同一サブタイプの)ウイルスのスーパー感染を阻止できないこと。(2)組換えウイルスがなんらかの生物学的優位性をもつことを示唆する。(3)第1のウイルス感染後、ウイルス増殖が良好に制御されていると考えられる感染例においても、比較的近縁なウイルス(共にサブタイプB)間でのスーパー感染が起こりうるという事実は、HIV-1に対する十分な防御的免疫反応を誘起するワクチン開発が必ずしも容易な課題ではないことを示唆するものである。
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