1.感受性細胞がないためウイルス力価の測定ができなかったヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)について、前初期蛋白により活性化される初期遺伝子プロモーターを利用し容易に力価を測定できるリポーター細胞株をすでに報告した。この細胞株を用いて測定した中和抗体価とウイルス粒子を抗原として測定したIgG抗体価に相関があること、HIVとHHV-8の重感染者におけるカポジ肉腫発症及び非発症群間でHHV-8に対する中和抗体価に有為な差が認められないことから中和抗体が発症抑制には一義的な役割を果たさないこと、DNA複製阻害剤であるphosphonoformic acidよりもインターフェロンα処理を行った方が血管内皮細胞におけるHHV-8の増殖・粒子産生を阻害できることを示した。 2.水痘帯状庖疹ウイルス(VZV)感染を迅速に検出できるリポーター細胞株の樹立の第1ステップとして18遺伝子のプロモーター1kb程度の領域について感染に伴う活性化を検討した。ORF9、61及び66で他と比べて高い活性化が見られ、それぞれ活性化モチーフを100-150塩基領域にマップした。また、感染の代わりにORF62発現プラスミドを導入することによる各プロモーターの転写活性化を測定すると感染に伴う活性化の間に強い相関があり、ORF62蛋白が他のVZV転写活性化因子以上に遺伝子発現に中心的な役割を果たしていると考察された。 3.サイトメガロウイルス(CMV)についても同様の解析を行った。CMV感染によりTRL4プロモーター活性化が最も顕著に見られたので、詳細な解析を行い転写開始点上流27〜126bpの領域に活性化モチーフをマップした。この領域を用いてリポーター細胞株を樹立した。 4.DNA複製のイニシエーターである複製起点(origin)結合蛋白OBPとorigin DNA配列との結合の詳細を明らかするためHHV-6のDNA認識に必須である約100アミノ酸からなるドメインについて酸性もしくは塩基性残基をアラニンに置換した変異蛋白15種類を作成した。現在、変異蛋白を用いてorigin配列との結合をゲルシフト法により検討している。
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