研究課題
2002年暮れに中国に勃発した重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行は世界を震憾とさせ、早急なワクチン開発への機運が高まった。本研究ではSARS-CoVに対する有効なワクチン開発のための基礎研究を行うことを目的とする。そのため、まずマウスモデルにおいて、既にヒトのワクチンに使用されているアラムアジュバントの有り無しの条件で不活化ワクチンを免疫し、誘導される免疫応答を解析した。不活化ワクチンとしてUV照射ウイルス粒子を用いた場合、アラム添加により高レベルの中和活性を有するIgG抗体とTh2タイプのT細胞誘導が認められ、アラム無しでも低いながら抗体が産生された。この時、Nucleocapsid(N)に対する抗体産生細胞がマウスの骨髄に長期に存在していること、誘導された血中SARS-CoV特異的抗体は少なくとも半年存続していることを明らかにした。この免疫方法ではIgAは検出されなかったが、ハイブリドーマ作成のために同じUV照射ウイルス粒子を抗原としてFreund's Complete Adjuvant(FCA)で過免疫した個体では低いながらもIgA抗体の産生が認められたことから、より免疫効果の高いアジュバントを選択することにより同抗原でSARS-CoV特異的IgAを誘導することは可能と考えられる。一方、Nucleocapsid(N)に対する連続した20 mer peptideを作成してT細胞エピトープについて検討を加えた結果、ワクチン投与マウスのT細胞はN蛋白の最初の110アミノ酸までのペプチドプールに主として反応することが明らかとなった。今後の解析のため、組換えN蛋白を粗精製し、ワクチン免疫したマウスのT細胞をin vitroで活性化する抗原提示細胞としてSpike(S)やNを発現するマウスB細胞を樹立した。現在、ワクチン抗原として用いるウイルスの大量精製を進めている。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
JJID. (in press)
Int.Immnol. 16
ページ: 1423-1430