研究概要 |
高等動物細胞は細胞レベルでの、ウイルス感染に対抗する手段を有しており、自然免疫機構として知られている。自然免疫は感染初期に特に重要であり、後期に機能し、抗原受容体を介する、より高度かつ特異的な獲得免疫とともに免疫反応の要として機能している。様々な細胞においてウイルスの複製を感知するセンサーが存在し、それがきっかけとなって下流の一連の反応が引き起こされるものと考えられてきた。長い間センサー分子の詳細は不明であったが、我々はRNAヘリカーゼの一つであるRIG-Iがその実体である事を発見した(Yoneyama et al.Nature Immunology 7,730,2004)。RIG-Iはウイルス由来の二重鎖RNAを認識するヘリカーゼドメインと下流にシグナルを伝えるCARDドメインからなることが明らかとなっている。ウイルスが感染して複製を開始すると、その過程で生じる2重鎖RNAをヘリカーゼドメインが感知してCARDドメインからシグナルが伝わる。我々の解析によりRIG-Iによる自然免疫機構はC型肝炎ウイルスをはじめとして各種のウイルス増殖抑制に重要であることが判明している。また、このシグナルが細胞増殖の制御にも重要であることが明らかになってきている。 RIG-Iはウイルス核酸をリガンドとする酵素であり、リガンドとして機能する分子を探索・開発することにより新規の抗ウイルス、抗癌活性を有する薬剤の開発などへの応用が期待される。
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