研究課題
私は、下記の所蔵先において、19世紀の金唐革紙・擬革紙にかんする雑誌記事・文献の収集を行った:National Art Library (London)、Archives of Art and Design (London)、Bibliothec Nationale de Paris (Paris)、Musee de Papier Peint (Mulhouse)、武蔵大学図書館、東京大学図書館。また、関連資料をレッドハウス(イギリス・ケント州、ナショナル・トラスト管轄)、堀木家(三重県)、金唐紙研究所(東京都)、お札と切手の博物館(東京都)、紙の博物館(東京都)にて検証した。とりわけ、イギリスを代表するデザイナー、ウィリアム・モリスが建築家フィリップ・ウェッブとともに建てたレッドハウスの内装に、一時期、擬革紙が使われていたことを示す写真が発見されたことは、日英間のデザインの交流史を探る上で大きな収穫であった。その成果の一部は、ラスキン文庫創立20周年記念研究シンポジウム「ウィリアム・モリスと保全」で発表した。また、イギリス・ウルヴァーハンプトン大学における国際ワークショップでの発表がきっかけとなり、アメリカ、オーストラリアの研究者と情報交換が実現し、金唐革紙の消費文化に関する新たな知見がもたらされた。三重県の堀木家においては、主に19世紀から20世紀初頭にかけての業務関係の書簡や売上台帳などの未開拓史料を検証した。これにより、イギリス系の商社が取引に力をいれていた東京の金唐革紙とは対照的に、伊勢の擬革紙の輸出にはドイツ系商社が大きく関わっていたことなどが判明した。これから解読を進める予定である。また年明けから、紙の博物館(東京、王子)の所蔵する金唐革紙の版木デザインの分析とデータベース化を進めていった。お札と切手の博物館が所蔵する版木ロールの保存状態などデータ収集を行い、保存されていた39点のロールのデザインを分析するために拓本作成を行った。
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第三回竹尾賞TAKEO 2004 デザイン史研究論文
デザイン学研究(日本デザイン学会) Vol.51, No.3
ページ: 11-20