東京農工大学工学部附属繊維博物館は「江戸時代に起源をもつ繊維関係道具・機械類に関する総合調査研究」の研究課題で平成14・15年度に特定領域研究「江戸のモノづくり」の科学研究費補助金を受けた。平成16年度は引続き繊維機器のメカニズムの調査にあたった。特に平成14・15年度の研究において十分取り上げられなかった日本の手織機の系統的調査研究に着手した。 研究経過:繊維博物館は日本各地の手織機の縮尺模型60点を所蔵している。これらは織物研究者重松成二氏(故人)が1980年代に日本各地を訪れてその地方の手織機を調査し、実測結果に基づいて15/100の縮尺で製作したものである。当時の手織機の現状を調査したところ、各地にある60台の手織機のうち52台は現在も以前と同じところで所蔵されており、そのうち16台は織ることが可能であるという回答を得た。織物業を廃業したところでも、モデル機は郷土博物館等に寄贈されて展示や体験学習に使われたり、保存会等で技術が伝承されていることが分かった。 この調査を通じて得られた情報やモデル機を訪問調査した結果を発信するため平成16年3月「日本の手織機便り」を発行し、現在までに8号を作成・送付した。 また模型の製作者は詳細な手描きの製図を残しており、これらを整理して新たにトレースを行った。 平成17年7月に、手織機模型にも含まれている鳥取県・島根県の手織機が小金井市文化財センターに寄贈された。現在、模型と製図に基づき、小金井市教育委員会とともにこれらの手織機の修復を行っている。その結果は第65回繊維博物館特別展「いま甦る手織機の世界」において公開した。 また手織りのような作業の記録においては、写真・ビデオでは十分に行うことができない。その解決法としてコンピュータグラフィックスによる再現を試み、結果を東京農工大学科学技術展2005において発表した。
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