ライデン国立民族学博物館所有のシーボルトコレクションには「大日本諸国名産紙集」130種近くがある。これは綴じられているが、綴じられずにある半紙類も残っている。これらの和紙は1826年(文政9年)主に大阪で購入したもので、西日本に産した紙が多い。16世紀には宣教師たちによりヨーロッパに和紙は伝えられ、その後輸出もされているが、まとまった海外の和紙コレクションとしてはこれが一番古いものである。 江戸時代の和紙の特徴を明らかにし、当時の和紙製造技術について検討する目的で同コレクションを現地調査した。測定項目は 紙の寸法、厚さ、坪量、耳の有無 漉き簀の素材、簀の目間隔、糸目間隔、受け桟の間隔 地合(繊維の分散の程度、密度ムラなど)、夾雑物 繊維の種類、添料の有無 であり、紙の地合、簀の目間隔などの特徴を紙の光透過像より抽出し、産地などの特徴をより多く得られるような試みのために、現地にスキャナーを持ち込み画像データの取得も行った。なお、同博物館所蔵の他の和紙コレクションも可能な限り調査した。現在これらのデータを取りまとめ、次年度の追加調査の計画を立案しているところである。
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