江戸時代の和紙の特徴を明らかにし、当時の和紙製造技術について検討する目的でオランダ国立民族学博物館所蔵のシーボルトコレクションおよびブロンホフコレクションを可能な限り調査した。和紙の測定項目は紙の寸法、厚さ、坪量などであり、調査点数は大凡400点となった。この調査結果をデータベース化した。イギリスのビクトリア・アンド・アルバート美術館所蔵のパークスコレクション(1871(明治4)年)412種の調査結果についても今回修正を加えた。生産地がわかっているまとまった和紙資料で当時の和紙全体を見渡して調査しうるものとしてはこの2種に勝るものはなく、これで、基本的なデータが揃ったことになる。 さらに、紙の地合、簀の目間隔などの特徴を紙の光透過像より抽出し、産地などの特徴をより多く得る試みのために、現地にスキャナを持ち込み画像データの取得も行った。透過像をフーリエ変換して得られた図からは、肉眼では計測できなかった紙の簾の目を求めることができた。ライデンの和紙資料に関しては出来る限り多くの資料から画像を取得するよう努めたが、ロンドンのパークスコレクションでは、シーボルトコレクション対応する紙と半紙類のあわせて75種を調査した。 以上のように、江戸時代の基本的な和紙のデータベースを作成したが、全ての産地と種類の紙が収集されているわけではないので、今後とも今回作製したデータベースを充実させていきたいと考えている。このような作業を続けていくことで、江戸時代の和紙製造技術を明らかに出来ると信じている。
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