研究課題
江戸期製鉄法の比較実験技術史学の観点から、江戸期製鉄法に多大の影響を与えた17世紀以降の前近代式西欧製鉄法の調査を行った。スウェーデン王立工科大学との連携により、スウェーデンストックホルムにおいて、Symposiumを開催し、日本刀とバイキング刀との比較検証を、特に日本固有の手法である「試し切り」を両者の刀に採用して比較した。いわゆる「藁づと」の試し切りを行ったのである。日本刀については、習熟度が切れ味に及ぼす影響を勘案し、スウェーデン人で、居合道経験一年の者と未経験者の両者を被検者に採用した。また日本刀については、試し切りの経験者は絶無であるから、未経験者を被検者に採用した。居合道による試し切りでは、右からの袈裟がけによる試しきりを行うことにしたが、右効きの者については、右足を踏み出し、左足を引かねば、袈裟斬りと同時に自らの左足を傷つける恐れがあり、これに関する注意を与えたところ、経験者には影響を及ぼさなかったが、未者については、恐怖感を与えることがあった。これに対し、スウェーデン刀は、フェンシングのように「片手斬り」による刀法が主体であり、初心者、経験者の差が切れ味に及ぼす影響は少ないと考えられる。ともあれ、2人のスウェーデン人による日本刀とスウェーデン刀の「切れ味」比較において、結果的には日本刀とスウェーデン刀とでは、さほどの差はないとの意外な結果を得た。本研究のように機械強度等定量化できる指標を用いずに、使用者による感覚的な切れ味を比較する試験は始めての試みであり、非常な意義があった。また製鉄法そのものについてもスウェーデン前近代式製鉄法と江戸期日本式製鉄法を比較したが、冶金学的には、両者にほとんど差は見られなかった。ただし江戸期日本式製鉄法については電動送風機を使用したのい対し、スウェーデン前近代式製鉄法では主動のふいごを使用したため、炉内温度は日本式の方が高かったため、正確な比較とは言いがたいが、日本式ふいごが現状ではほとんど再現できないことからやむを得ない。
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Steel Research International, (in press)
Proceedings of John Floyd Symposium on Sustainable Development ion Metals Processing, July, 3-5, 2005, Melbourne, Australia (Edited by M.)
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