初年度の今年は能楽関連文献、能装束、能面等に関する基礎資料の収集に焦点を絞り、研究活動を以下のとおり行った。 (1)カネボウ・コレクションの能装束に関わる基礎研究に必要なものとして、能装束類に関する基礎的文献・図版資料の収集に力を注ぎ、現時点で入手可能な前記公刊資料及びこれに関連する文献資料を購入した。カネボウ・コレクションの能装束の多くは旧大名家から流出したものと考えられるため、旧大名家所蔵の能装束との類似比較が必要となる。またカネボウ・コレクションの能装束には制作年代を畳紙などに表記したものもなく、厳島神社等のそうした紀年銘を有する資料との比較も必要である。今回購入した公刊史料によりこれらの必要に応えることができる。 (2)能楽関連古文献の国内調査を行った。宮内庁書陵部・東大史料編纂所に所蔵されている能面作者に関する文献史料を調査することにより、能楽における能面の役割や歴史的意味などについて情報を得ることができた。 (3)写真データベース作成の一環として、国立能楽堂寄託のカネボウ・コレクションの能面の撮影を行った。これによって、カネボウ・コレクションの能面全ての撮影が完了した。 (4)カネボウ・コレクションの能面との類似性、近親性が想定される能面の海外調査を行った(西野春雄)。イタリア、ジェノバ市の東洋美術館において、能面の調査を行い、国内でも非常に珍しいとされる能面の存在を明らかにした。 (5)カネボウ・コレクション所蔵の能装束との類似性、近親性が想定される能装束の国内調査を行った(長崎巌)。岡山、池田家所蔵の能装束、及び広島、厳島神社の作品調査を行い、展示されることの少ない両所蔵の能装束全ての調書を作成することができた。 (6)カネボウ・コレクションの能面の調査を実物調査を行った(研究協力者 宮本圭造)。同コレクションの能面に関する詳細な調書を作成することができた。
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