今年度は、日本にオランダ船が持ち渡った輸入品の内、将軍をはじめとする幕府高官、長崎地役人等によって、オランダ船に注文されたものの持ち渡り品である「誂物」に焦点を絞り、その輸入の実態(品目名・種類・数量・原産地等)を19世紀前半の事例を通して解明するための基礎作業をおこなった。具体的には、現存する享和3年(1803)・文化10年(1813)・文化14年(1817)・文政2年(1819)・文政3年(1820)・文政5年(1822)・文政7年(1824)・文政10年(1827)・天保8年(1837)・天保15年(1844)のオランダ側史料(「送り状」等)とその翻訳である日本側史料(「積荷目録」等)を収集・照合し、オランダ船の「誂物」に関する彼我の用語を確定し、如何なる誂物が当時、日本に入ってきていたかを究明した。さらに、天保8年(1837)の事例においては、「送り状」と「積荷目録」に加え、オランダ側史料「日本商館勘定帳」「日本商館脇荷勘定帳」内の誂物リストと日本側史料「御内用方諸書留」内の誂物リストの分析・照合を通して、詳細にどのような商品が誂物として輸入され発注者に渡されることになっていたかを調査・研究し、「オランダ船の誂物輸入について-天保8年(1837)を事例として-」と題して発表した。 また、今年度は18世紀末〜19世紀前半のオランダ船の輸入品の内、本方荷物を中心に『日蘭貿易の史的研究』と題して著書にまとめたが、この中で染織品(特に海黄)の輸入分析においては、「誂物」輸入を含めて考察した。
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