研究課題
本年度は、のぞきからくり及び関連芸能の実演機会を捉えての実地調査と、種板等のぞきからくり装置を構成する諸要素の撮影、計測を中心に調査・研究を実施し、以下のような成果を得た。現存するからくり芸能として貴重な伝承例である「知立の山車文楽とからくり」の現地公開調査を実施し、語り物と融合したからくり芝居を伝承している実演例の写真・ビデオ撮影により資料を収集した。長崎県南高来郡深江町「のぞきからくり保存会」による大阪四天王寺「のぞきからくり」公演の調査をおこなった。同保存会の全レパートリー6演目のビデオ撮影を実施し、併せて聞取り調査を行った。「のぞきからくり」の音声資料を収集している大阪在住の収集家に対し、所蔵品及び聞き取り調査を実施した。調査した資料は戦前の「のぞきからくり」を伝える第一級資料であり、録音内容の分析・研究もまた重要な課題であることが確認された。大阪府立演芸資料館所蔵の関連芸能「錦影絵」の映像資料の確認調査を実施した。この映像は、装置の詳細、操作法、及び実演等に関しての貴重な映像であり、重要な基礎資料となることが確認できた。実演を調査した長崎県深江町の「のぞきからくり」について、「のぞきからくり」原画の調査を実施した。残存する全ての原画について、絵の輪郭に沿って穿孔が打たれていたり、あるいは火炎の部分を切り抜いて赤い薄紙を張るなどして、裏から光源を当て、暗がりで浮かび上がるような工夫がなされていることが確認された。同様の工夫は、昨年の奄美大島の原野農芸博物館所蔵の一部の種絵にも施されており、「のぞきからくり」の原画における基本的手法であることが確認できた。今回調査対象の原画の特徴としては、非常に軽量であるという点であり、装置運搬の便を考えたものであろうと推測された。