研究課題
本年度は、のぞきからくり及び関連芸能の実地調査と、関係記録資料の調査を実施し、以下のような成果を得た。5月には「のぞきからくり」との関連性が認められる寄席芸能に深い造詣のある音声資料収集家(藤原四郎氏)から、戦前の京都での「のぞきからくり」の聞き取り調査を行った。大阪以外での興行についての貴重な調査となった。8月には、技術産業記念館で開催中の「トヨタコレクション展」で、興行用とは別に、室内用の高級玩具として製作された「のぞきからくり」が、同館にも収蔵されていることを確認した。さらに開催中の愛知万博において、イラン館に展示されている「のぞきからくり」類似装置の調査を行い、資料を収集した。あわせて在関西の研究者との意見交換を行い、浪曲にも「のぞき節」を利用している演目があることの指摘を受けるとともに、その音声資料の提供を受けた。11月には、兵庫県龍野市立歴史文化資料館で開催された特別展「遊びの技術」(1997年8月)で「のぞきからくり」の展示があったとの情報を得、調査を行い、関係資料を収集した。さらに兵庫県立歴史博物館所蔵の「のぞきからくり」(入江コレクション)に関係する調査を実施し、関係資料を収集した。12月には、「のぞきからくり」の語りときわめて関係の深い浪花節に関して、国立文楽劇場における公演調査を通じてその現状確認を実施した。その他、本特定領域研究の最終年度として、10月の長野及び1月の沖縄で開催された、本特定領域研究に関わるシンポジウム及び研究者集会に参加し、本研究の領域全体における位置づけを確認するとともに、他の研究者と意見交換を進めることにより、本研究のとりまとめについての方向性を検討した。