中世遺跡をはじめとした、「記録保存」のための発掘調査で蓄積した出土品の保管や、歴史情報の管理等について、各地の自治体の教育委員会、ならびに外郭団体の埋蔵文化財センターでの実態調査を実施した。出土品の大半は一応収蔵庫に保管されてはいるが、十分にデータベース化されていないところが多く、外部からの照会に応じての対応に課題を残すところが顕著であった。 国史跡の整備・活用については、いくつかの課題が指摘できる。まず、画一化した史跡の整備が増えているが、整備の理念についての議論が十分とはいえないし、活用の仕方を前提にした多様な整備が必要とみなしうるとこが目につく。また、資料館等が併設された史跡公園はいいが、そうでないところでは専門家が不在で、歴史の学習には不十分であった。情景復元をした史跡やそうでない史跡など、多様化の兆しはあるが、もっと多彩な整備・公開があっていい。なお、マスコミ等をつうじて国民に周知されたものは、おおむね入園者が多かったが、そのほかの史跡に訪れる人はさほど多くはない。これらでは広報が徹底されていないし、交通アクセスについても多くの課題を抱えているのが普通であった。 海外では、ベトナムのタンロン宮殿遺跡の保存会議に出席したが、ハノイの中心部という市街地における保存と活用の困難さが浮き彫りにされた。また、市街地で深く掘り下げねばならない、重層化した遺跡の調査にも課題が残された。いっぽう、高句麗遺跡は観光資源として活用されていて、その利用度は高いが、修復における学術的根拠といった観点からは問題がないとはいえない。
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