研究課題
今年度は昨年解析を行った中世集団墓地に隣接する由比ヶ浜南遺跡に埋葬された人骨のDNA分析を進めた。昨年分析を進めた集団墓地が複数個体の一括埋葬であったのに対し、由比ヶ浜南遺跡は、単体埋葬された人骨を分析の対象とした。昨年同様24体の人骨を対象に、DNAの抽出とミトコンドリアDNAの解析を行った。その結果、今年度は19個体の解析が可能だった。こちらは全部で27の変異箇所が検出され、16のタイプに分類された。こちらも同一配列を持ち、母系の血縁関係が予想されるものは2個体づつ3組で、特に特定の配列に集中すると言うことはなかった。双方の遺跡を通して見ても、D-loopの塩基配列が一致したものは2個体ずつ6組のみで、双方の遺跡に共通するのは1組だけであった。従って、特定の血縁集団の墓地ではないという昨年度の結果を追認するかたちになった。ハプログループ頻度を日本の他の集団と比較したところ、中世鎌倉のハプログループの頻度分布は、基本的には現代日本人に似ていることがわかった。しかしながら縄文人とは異なっており、一部の形態学者が言う中世鎌倉と縄文の共通性を示唆することはなかった。むしろ、現代の日本人に通じる遺伝子構成をしていたことが証明された。しかしながら中世鎌倉人骨の中には、日本人には非常に珍しいハプログループを持つ個体も存在しており、彼らは海外から渡来してきた人であった可能性もある。そうであれば中世鎌倉の国際性を示すものだと考えられるが、結論を確かめるためには、更に解析個体数を増やして、日本にはあまり多くないハプログループが更に出現するかを確かめる必要がある。今後の課題としたい。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
American Journal of Physical Anthropology (Published Online)
Biomolecular Archaeology(DM.Reed ed.)(Center for Archaeological Investigations, Southern Illinois Univ) 32
ページ: 61-92