日本の遺跡は各時代の遺構が重層したものが多く、中世の遺跡も、古代の遺跡や近世の遺跡、あるいは近世・近代の歴史的建造物などと重複している場合もみられものもある。遺跡の発掘をどの時期の面で止めて保存するか、どの遺構をどのように理解し、どのように表現するか、また、まちづくり計画の中に遺跡の活用をどのように位置づけるか等、課題は多い。 このような状況をふまえ、本研究では中世遺跡について、都市・城館・寺院・庭園等の保護施策(保存・整備・活用)の現況を把握、歴史認識の異なるであろう海外における遺跡保護施策事例との比較検討も含め、その特色と問題点を明らかにし、より望ましい保護施策の提示を行うことを目的としている。2004年度は、(1)国内の遺跡に関する文献資料の収集、(2)平城宮における宮廷儀礼の復興に関する基礎的研究、(3)韓国の遺跡の保存・活用に関する資料の収集と翻訳、(4)ドイツのトリアーにおける遺跡の保存と整備に関する現地調査を行った。 特に(2)では、遺跡の活用というとその広さなどの利点を活かし、遺跡本来の姿とは関わりのない使われ方をする場合もしばしば見受けられるが、他の公園などとの差別化を考えた場合、その場所がもつ歴史的特性を踏まえ、場所の個性を発展させる方向が遺跡あるいはその地域を個性的で魅力的なものにできる可能性が高いことを指摘した。その視点に立って宮廷儀礼である「射礼」復興への考察を試み、市民参加型の具体的なプログラムも提示した。
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