欧米型食習慣による動物性脂肪摂取が発症に関与している大腸がんにおけるがん関連タンパク質と脂質化合物の受容体として脂質代謝を制御する核内レセプターとの相互作用を解析した。LEF/TCF4反応性ルシフェラーゼレポーターを用いてβ-カテニンの転写誘導活性に対するオキシステロール受容体LXRαの効果を検討した結果、LXRαはリガンド依存性にβ-カテニンの活性を抑制した。LXRβにも同様の活性を認めた。リガンド依存性活性化能を失ったLXRα-AF-2ドメイン欠損体にはβ-カテニンの活性抑制作用を認めなかったが、DNA結合様式が野生型と異なるLXRα-pgr変異体にはリガンド依存性β-カテニン活性抑制作用を認めた。LXRαはリガンド依存性に、β-カテニンによるサイクリンD1プロモーター活性化作用も抑制した。GAL4キメラタンパク質とVP16キメラタンパク質との相互作用を利用したmammalian two hybrid法にて、LXRαとβ-カテニンのC末端側との相互作用を認めた。β-カテニンとの相互作用が報告されているビタミンD受容体は、β-カテニンのC末端側への作用は認めなかった。また、LXRαはβ-カテニンとTCF4との相互作用に影響を与えなかった。実験結果は、オキシステロール受容体LXRαがリガンド依存性に、β-カテニンのC末端側と直接的または間接的に相互作用をしていることを示している。LXRは、コレステロール代謝のみならず炎症反応や自然免疫応答とも関連していることが最近報告されたが、本研究により細胞の増殖シグナルとも関与することが示唆された。脂質代謝と大腸がんの発症との関連性についてさらに解析を進めたい。
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