研究課題/領域番号 |
16021236
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
饗場 篤 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20271116)
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研究分担者 |
松田 育雄 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (50335452)
新石 健二 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (40362769)
原田 武志 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (30362768)
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キーワード | Rac1 / 基底細胞 / 発がん / 浸潤 / コンディショナルノックアウト / トランスジェニック / Cre / テオラサイクリン |
研究概要 |
発がん・浸潤・転移に関与すると考えられるRac1のコンディショナルノックアウトマウスの作製を行なった。rac1遺伝子座にloxPを導入したrac1(flox/flox)マウスに表皮基底細胞でCreを発現するケラチンK5-creトランスジーンを導入し、基底細胞特異的Rac1ノックアウトマウスを作製した。このマウスでは体毛の異常が見られ電顕微鏡による観察では体毛の太さが均一ではなく縮れているように見える。さらに、皮膚切片のHE染色の結果、表皮の構造に大きな異常は認められないが、皮下脂肪が野生型に比較し増大していること、メラニンが減少していることがわかった。縮れ毛やメラニンの減少は銅のトランスポーターであるATP7Aの欠損によって生じるメンケス病の症状に類似しており、Rac1欠損により銅代謝異常が起こっている可能性が示唆された。さらに、Creとがん遺伝子の発現が同時に同一の細胞で起こるMMTV-LTRの制御下にテトラサイクリン調節性トランス活性化因子(tTA)を発現するTgと両方向性のテトラサイクリン応答因子(TRE)制御下にCreとポリオーマウイルスミドルT(PyV-mT)を発現するTgの2重Tgはドキシサイクリン投与中止後10週から36週で腫瘍を形成した。このマウスで多く見られる腫瘍は、毛嚢、皮脂腺由来と考えられ、リンパ管浸潤像、核分裂像を非常に多く伴っている。また、神経細胞特異的エノラーゼプロモーター下でtTAを発現するTgとTRE下で代謝型グルタミン酸受容体mGluR1を発現する2重Tgは全てのマウスでメラノーマを形成し、メラノーマ形成はドキシサイクリン投与により抑制される。この2重TgはmGluR1のメラノーマ形成における役割の検討、およびmGluR1経路の遮断によるメラノーマ治療法の開発に非常に適した発がんモデルマウスであると考えられる。
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