(1)LPAやオートタキシンはLPA受容体LPA1を介し細胞運動を促進する 癌細胞運動性促進因子オートタキシンはLPAを介し細胞運動性を促進する。LPAやオートタキシンによる細胞運動性はGiの阻害剤である百日咳毒素で阻害されるので、Gタンパク質共役型の受容体を介する可能性が高い。LPA1-3のノックスト(KO)マウスから線維芽細胞を調整し、LPAやオートタキシンによる運動性を検討した。その結果、LPA1 KOマウスから調整した線維芽細胞はLPAやオートタキシンにより全く運動能を示さず、LPAやオートタキシンはLPA受容体LPA1を介し細胞運動を促進することが分かった。 (2)第3のLPA受容体LPA3のノックアウトマウスの表現型解析 LPA受容体LPA3のノックアウト(KO)マウスの表現型解析を通じ、LPAの生理機能の解明を試みた。LPA3 KOマウスはメンデルの法則に従い誕生し、外見上異常は観察されなかった。しかし、♀個体の産仔数が極端に少ないことが分かった。野生型では平均約8匹の産仔数が観察されたが、LPA3 KOマウスでは産仔数は約半分の4匹であった。また、妊娠期間が野生型に比べ、約1日延長していた。詳細な解析に結果、LPA3 KOマウスでは、着床に異常があることが分かった。野生型では、マウスの交配が成立した後4.5日後には子宮における着床斑がしっかりと観察されるのに対し、LPA3 KOマウスではこの時期においては着床斑がまったく観察されなかった。また、野生型では、着床した胎児が均一に子宮内に並ぶのに対し、LPA3 KOマウスでは胎児が子宮内に不均一に並び、スペーシング異常を起こしていることも分かった。
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