p38やERKなどのMAPキナーゼ(MAPK)経路は、がん化やがん病態と密接に関連する。ERKとp38の機能と、そこで働くシグナル経路の解明を目的とし、これらMAPKの遺伝子改変マウスを作成/解析した。 p38αの結合領域(CD領域)にsem型点突然変異を導入すると、一部の基質が結合せず、活性化されなくなる。sem型p38αをノックインしたマウスのマクロファージをLPSで刺激すると、アポトーシスの顕著な亢進を認め、p38α経路の限定された標的分子が、アポトーシスの抑制に必須であることが明らかになった。 また、T細胞でERK2を欠くコンディショナルノックアウトマウスを作成しCD4、CD8単独陽性成熟T細胞への分化が抑制されること、転写因子Egr-1の発現が低下していること、を明らかにした。Egr-1のノックアウトマウスでも同様の分化障害が報告されており、Egr-1がERK2の生理的な標的遺子であることが示唆された。血球全般および血管内皮でERK2を欠くコンディショナルノックアウトマウスも作成し、生存可能なことを明らかにした。
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