研究概要 |
研究代表者らが発見した分裂酵母新規マップキナーゼPmk1系は,細胞増殖とともに細胞形態形成,特に細胞質分裂において重要であり,カルシニューリンと機能的関連性をもつことが既に明らかにされている。また,その構造はヒトの細胞増殖を制御するマップキナーゼと高い相同性を示すので,分裂酵母におけるマップキナーゼの機能解析は,ヒトのマップキナーゼ異常による病態や分子標的治療に直結している。本年度は以下のような結果を得た。 1.カルシニューリン制御サブユニットの役割の解明 分裂酵母のカルシニューリン制御サブユニットを新たにクローニングし,遺伝子ノックアウトを行なった。ノックアウト細胞に種々の遺伝子を過剰発現することで表現型の変化を調べたところ,制御サブユニットがin vivoにおけるカルシニューリン活性に必須であることが明らかになった。 2.マップキナーゼ経路におけるmRNA安定性制御の重要性 カルシニユーリンのノックアウト表現型を相補する多コピー抑圧遺伝子の一つを単離し,配列決定をしたところ,RNA結合蛋白質をコードしていた。このRNA結合蛋白質は,Pmk1マップキナーゼを抑制すると思われるPmp1マップキナーゼホスファターゼのmRNAと結合し,安定化するマップキナーゼの抑制因子であることが明らかになった。 3.カルシニューリンと機能的に関連する細胞内輸送因子アダプチンApm1の発見 温度感受性と免疫抑制薬感受性を指標とした遺伝学的スクリーニングにより遺伝子apm1を発見した。apm1遺伝子ノックアウト細胞は、カルシニューリン活性に対する依存性を示すとともに,ゴルジ体から細胞膜への輸送に異常を示し,Apm1がゴルジから細胞膜への輸送に働いていることが明らかになった。また,Apm1は核にも局在し,機能していることが示唆された。
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