ASAPデータベース、他の論文、スプライシングパターンを参考に78例を選び出し、それらについてヒトColon、Kidney、Lung、Uterusそれぞれの正常組織及びがん組織のRNAについてスプライシングパターンを調べた。うち4例において全ての組織で正常組織とがん組織の間に差が見られた。そのうち3例、tropomyosin 1α鎖の第6エクソンとintegrin β4サブユニットの第33エクソン、actinin 1の第19エクソンについてエクソントラップベクターを構築してがん由来培養細胞に導入し、スプライシングパターンを観察した。いずれも標的エクソンの上流200bp〜下流300bpを含むように構築したが、いずれもがん組織におけるスプライシングパターンの傾向が維持されていた。tropomyosin 1、integrin β4サブユニットについてはエクソンをけずったり、入れ替えたりしてもこのパターンに変化は見られなかったことから、制御に関わるシス配列はイントロン上に存在すると考えられる。また、マウスが由来細胞株におけるマウスtropomyosin 1、integrin β4サブユニットはヒトのがんスプライシングパターンを示さなかったにも関わらず、この細胞にヒトの配列をもったエクソントラップベクターを導入するとそれが再現されたことから、ヒトとマウスの配列の相違部分が制御配列である可能性が高い。 これらエクソントラップのベクターの更なる改変体の作製、及び正常細胞のモデルとして初代培養細胞への導入により、さらに詳細な制御配列の同定を試みている。
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