我々は慢性骨髄性白血病(CML)の原因分子BCR-ABLの特異的阻害剤であるイマチニブがなぜCML細胞にアポトーシスを誘導するのか、さらにはイマチニブ耐性をどのように克服するかいう研究テーマに取り組んできた。その研究過程のなかで、線虫の寿命関連分子DAF16のヒトオルソログFKHRL1転写因子がCML細胞ではBCR-ABLシグナル伝達系の下流に不活化された状態で存在すること、イマチニブ添加によってBCR-ABLシグナル伝達経路が遮断されるとFKHRL1は核内へと移行し、転写因子としての機能を発揮することを明らかにした。本研究ではCML細胞におけるFKHRL1の機能を明らかにするために、イマチニブ感受性CML細胞株にタモキシフェン添加によって核内に活性型FKHRL1の発現を強制的に誘導できる系を樹立し、DNAマイクロアレイ法を用いてFKHRL1の標的分子の同定を試みた。その結果、TRAILがFKHRL1の標的分子であることがわかった。イマチニブ感受性細胞株ではイマチニブ処理によってTRAILの発現が認められたが、耐性株ではイマチニブ処理によるTRAILの発現は認めなかった。さらにイマチニブ耐性株にTRAILを強制発現させると、アポトーシスが誘導された。以上よりイマチニブのCML細胞に対する殺細胞効果はFKHRL1の活性化によるTRAILの発現誘導が深く関与していることがわかった。したがってイマチニブ耐性克服にはFKHRL1の活性化およびその下流分子であるTRAILを発現させることが重要であると考えられる。
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