ERBINがp0071との結合を介して細胞間接着をどの様に制御しているかを検討するために、培養細胞系にERBINの種々の変異体を強制発現させ、その影響を観察した。これまでにN末端側に存在するleucine-rich repeatsドメインがERBINの形質膜への局在に重要であることが報告されているが、今回私共は、ERBINのleucine-rich repeatsドメインよりもさらにN末端の部分(1-32アミノ酸残基)を欠失させると、形質膜への局在が見られなくなり、この部分がERBINの形質膜への局在に重要である可能性を認めた。siRNAi法を用いてCaSki細胞(ヒト子宮頸部がん細胞株)でERBINの発現を低下させ、さらにカルシウム・スウィッチ法を行って細胞間接着の初期形成過程を観察すると、ERBINをノックダウンしたものでは、コントロールsiRNAで処理したものに比べ、アドヘレンス・ジャンクションの形成が遅延する傾向が認められた。ERBINの線虫のホモローグであるLET-413の変異体では、trichollyalin及びplectinと相同性を有する蛋白質であるAJM-1の局在が変化することが報告されているが、私共は、細胞骨格蛋白質ケラチンと結合する蛋白質として、trichohyalin及びplectinと相同性を有する新規蛋白質トリコプレイン(trichoplein)を同定した。トリコプレインは、Caco-2細胞及び小腸上皮において、apical cortical region (terminal web)のケラチンと共局在し、また、デスモソームにも存在していた。
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