研究概要 |
アドレノメジュリンアンタゴニストペプタイドの腫瘍内投与によってSCIDマウスに移植された膵癌が退縮すること,大型血管(径>8μm)が消失すると言う事実に基づいて,本研究では,アドレノメジュリンアンタゴニスト発現ベクターをNaked DNAとして作成し,その腫瘍内投与,筋肉内投与の効果を検討した。また,アドレノメジュリンmRNA発現を低酸素・低栄養条件下で観察した。その結果,アドレノメジュリンmRNA発現は低酸素下で4-5倍に増加し,低酸素+低栄養条件下では10-10数倍に増加した。SCIDマウス背部皮下に移植した膵癌細胞が5mm程度に増殖した9日目に腫瘍内に発現ベクターを1回投与し,その後腫瘍増殖を観察した。21日目には発現ベクターを投与した群では腫瘍がほぼ消失した。残存している腫瘍組織内の血管内皮細胞を抗CD31抗体にて染色後観察すると完全に腫瘍内の血管内皮細胞は消失していた。さらにSCIDマウス背部皮下に移植した膵癌細胞が5mm程度に増殖した9日目に大腿部筋肉内に発現ベクターを注射して,その後腫瘍増殖を観察した。腫瘍内注射と同様に21日目には発現ベクターを投与した群では腫瘍がほぼ消失した。同様に残存している腫瘍組織内の血管内皮細胞を抗CD31抗体にて染色後観察すると完全に腫瘍内の血管内皮細胞は消失していた。膵癌以外の乳癌細胞株を同様に背部皮下に移植し,大腿部筋肉内に発現ベクターを注射するという検討も行った。膵癌と同様に大腿部筋肉内への1回の注射にて腫瘍増殖は抑えられ,血管内皮細胞も消失していた。以上の結果は,アドレノメジュリンアンタゴニスト発現ベクター(Naked DNA)の筋肉内投与という遺伝子治療法が膵癌を始めとした癌の治療法に使用できる可能性を示唆する。
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