研究課題
ヒト胃癌株化細胞MKN45(p53野生型)とMKN28(p53変異型)、マウス大腸癌株化細胞Colone26 p53 status不明)の培養系でエチニルシチジン1-(3-C-ethynyl-β-D-ribo-pentofuranosyl)cytosine(ECyd、TAS106)とX線照射を組み合わせてアポトーシス誘導、G2/M期チェック機能に係わるCyclin B1、Cdc2、Wee1の活性化とこれと連携してアポトーシス抑制に係わるSurvivinの発現を観察した。以上の実験から、培養細胞系でX線照射あるいはECyd単独処理ではほとんど見られないアポトーシス誘導が同時併用処理により強く誘導されることが判明した。さらに、増殖死の線量効果曲線においても同時併用処理は強い増感効果を示した。これらは全てECydによるG2/M期チェック機能蛋白質活性化の抑制とSurvivinの発現抑制に依るものであることが判明した。このことから、アポトーシス増感はそのまま増殖死増感に反映されたものと見なされた。したがって、本方法が実際の治療に応用可能であることが示唆された。このことを実証するため、マウス大腸癌株化細胞Colone26をマウス後肢底に移植した固形腫瘍モデルを用い、移植10日後に2GyX線照射と0.1mg/kgECyd投与を行った。それぞれ単独処理ではほとんど腫瘍成長に影響を与えなかったが、それらを組み合わせた方法では顕著な成長抑制を示し、3回の繰り返し処理では約半数の腫瘍においてほぼ完全な抑制が観察された。腫瘍成長には血管内皮細胞と腫瘍細胞との相互作用が重要であり、またX線照射は内皮細胞における血管成長因子の発現を亢進することから、ECydが血管成長因子発現の抑制により顕著な抗腫瘍効果が起こると仮定し、組織学的検査ならびにVEGFmRNA発現の測定を行った。併用処理を行った腫瘍の1日後の電子顕微鏡像では、内皮、腫瘍細胞それぞれに細胞萎縮、泡沫を含んだ突起形成等アポトーシス初期像が観察されており、両細胞とも腫瘍成長のの抑制に係わっていることが明らかになったが、RT-PCRによりVEGF120、164、188のmRNA発現の定量測定を行ったところ、X線照射のみとX線照射とECyd処理を組み合わせた場合とではそれらの発現量に差は小さく、ECydが血管成長因子の発現抑制に関与しているとは結論できなかった。
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