研究概要 |
研究代表者・田代らが「網羅的分泌タンパク質捕獲法(signal sequence trap法、田代ら,Science,261,1993)」によりラット海馬由来のcDNAライブラリーから単離した幹細胞由来神経幹細胞生存因子(SDNSF)は、幹細胞を増殖させることなく細胞の活きの良さを向上させて生存させるという、従来の幹細胞増殖因子には認められない新規な生理活性を示す。この特性は、放射線治療の補助薬として幹細胞や前駆細胞の生存率を向上し治療成績を向上するためには最適な活性プロファイルである。本研究では、がんに対する放射線治療の際にSDNSFサイトカインをあらかじめ投与することによって、有害事象が軽減し、治療成績の向上が認められるかどうかをin vivoで検討するため、SDNSF遺伝子欠損マウスの樹立に着手した。常法に従い、ターゲティングベクターを構築し、CBA・C57/BL6系統のF1由来のES細胞株(TT2細胞)にエレクトロポレーション法によって導入後、多数の候補クローンを得ることに成功した。今後、SDNSFホモ遺伝子欠損マウスが樹立され次第、放射線治療時におけるSDNSFのin vivo評価系の確立を目指していく。併せて、分担研究者の高橋により、擬脳腫瘍細胞にSDNSFを添加してから放射線照射後の生存細胞数を比較する実験を実行するため、現在、リコンビナントSDNSFタンパク質を作製・精製中であり、まもなく実行する。
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