癌遺伝子産物の発現量を、そのタンパク質分解を促進することによって低下させるシステムを構築し、臨床応用の可能性を検討することが本研究の目的である。最近、われわれはU-box型ユビキチンリガーゼを同定し報告した。このU-box型ユビキチンリガーゼはSCF型ユビキチンリガーゼとは異なり、単体よりなりその単一分子中に基質と結合する領域および基質にユビキチンを付加する領域(U-box)の両方を持っているのが特徴である。よってハイブリットU-boxタンパク質は、より効率よく基質をユビキチン化し分解に導く可能性がある。われわれは、U-box型ユビキチンリガーゼのU-boxタンパク質と癌遺伝子産物(Myc)と結合することが知られているタンパク質(Max)とのハイブリッドU-boxタンパク質(U-box/Maxハイブリッドタンパク質)を作製し、培養細胞を用いてMycに対する影響を検討した。その結果としてこの人工ハイブリッド型ユビキチンリガーゼによってMycのユビキチン化が促進され、その半減期が短縮されることを確認した。また培養細胞にこの人工ハイブリッド型ユビキチンリガーゼとMycを共同発現させることによりMyc誘導性のコロニー形成能が阻害された。さらにはこの人工ハイブリッド型ユビキチンリガーゼとMycを共同発現する細胞をヌードマウスに移植したところ明らかに造腫瘍能の低下を認められた。 この方法が確立されれば、結合蛋白が知られている癌遺伝子についてはすべて利用が可能であり、癌遺伝子の蛋白発現レベルでの新しい制御方法として大きな発展が期待される。
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