研究課題/領域番号 |
16023248
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩本 幸英 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (00213322)
|
研究分担者 |
小田 義直 九州大学, 大学院・医学研究院, 講師 (70291515)
田中 和宏 九州大学, 大学病院, 助手 (10274458)
|
キーワード | Ewing肉腫 / アポトーシス / 分子標的治療 / p53 / p300 / アセチル化 |
研究概要 |
Ewing肉腫(ES)は、骨軟部悪性腫瘍の中で最も生命予後不良な腫瘍である。ESでは染色体転座による特異的融合遺伝子EWS-Fli1みられるが、その発がん機構は不明であった。我々は、転写因子EWS-Fli1の標的遺伝子の同定を進め、G1/S期への移行に関わる細胞周期制御因子であるCyclinD1、CyclinE、p21、p27がEWS-Fli1の標的であることを明らかにした。ESにおいては、癌抑制遺伝子Rbとp53の遺伝子異常がほとんど見られないが、我々の研究結果からESにおいてはRb経路の抑制が起こっていると考えることができる。一方、世界的に見てもESにおけるp53経路の解析は行われておらず、特に、p53の重要な機能であるアポトーシス誘導に関しては全く不明である。本研究の目的は、1)ES細胞でのEWS-Fli1によるp53機能抑制、特にアポトーシス誘導の抑制の機構と、そこに関わるEWS-Fli1の標的遺伝子を明らかにし、2)それらの標的分子を阻害することでES細胞にアポトーシスを誘導できるか検討を加え、ESの新しい分子標的治療の開発につなげることである。EWS-Fli1融合遺伝子はESに特異的であり正常細胞には存在しない。本研究は、正常細胞に全く作用のないESに特異的な新しい治療法の開発につながる、極めて独創的かつ重要な研究である。本年度において我々は、ESにおけるEWS-Fli1によるp53機能抑制のメカニズムについて解析し、EWS-Fli1はp300およびp53と複合体を形成して、p300によるp53のアセチル化を抑制すること、これがp21などのp53標的遺伝子の発現誘導低下の原因であること、を明らかにした。すなわち、EWS-Fli1はp300の機能阻害を介してp53機能の一部を抑制している可能性が示された。しかし、一方で、EWS-Fli1がp300を介さずp53に直接結合しうる事も明らかとなり、EWS-Fli1によるp53機能の抑制機構は単純ではないことも判明した。従って、今後さらに強力に研究を推進し、EWS-Fli1によるp53阻害機構の全貌を明らかにしたいと考えている。
|