腫瘍の代謝活動を反映する放射性画像診断薬の開発が強く望まれている。これまでに、Zn-65により脳腫瘍を陽性像として鮮明に画像化することに成功し、短半減期放射性亜鉛(Zn-69m:半減期、13.76時間)が腫瘍代謝活動のマーカーとして画像診断に有用であることを示した。また、脳腫瘍モデルラットの脳における亜鉛代謝を、神経変性病巣をもつ病態モデルと比較したところ、脳腫瘍のある脳では、病巣部位以外での亜鉛の取込はコントロールの脳と比べ有意に低下したが、神経変性のある脳では、病巣部位以外での亜鉛取込はコントロールの脳と同程度であり、低下しなかった。すなわち、脳内亜鉛代謝が脳腫瘍増殖と関連して特徴的に変わることが示唆された。本研究では脳腫瘍の治療効果の判定に対する亜鉛代謝情報の有用性を明らかにするために、放射線照射後のグリオーマにおける亜鉛取込を検討した。その結果、γ線照射線量の増加とともに、アポトーシスへと移行する細胞が観察され、亜鉛の取込が増加することが明らかとなった。また一方、細胞内亜鉛結合蛋白質であるメタロチオネインの遺伝子発現をそのアンチセンスDNAで阻害すると、がん細胞増殖が抑制され、細胞死も惹起された。亜鉛代謝が細胞の活動性と密接に関係していることが示唆された。以上、脳腫瘍の放射線治療効果の判定ならびに活動性評価に対する亜鉛代謝情報の有用性が示唆された。
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