NK細胞とNKT細胞による標的細胞の認識機構および傷害機構を明らかにし、その免疫学的腫瘍監視機構における重要性の解明、さらに、これらの細胞が発現する機能分子の応用による効率的な腫瘍免疫の誘導をめざして研究を行った。これまでの研究で、NK細胞上に発現するTRAILが腫瘍サーベイランスにおいて非常に重要な役割を担っていることを明らかにしてきた。本年度の研究により、NK細胞に発現したTRAILによる腫瘍監視機構は個体発生の初期から存在し、TRAILが特に幼弱期における腫瘍監視機構における中心的なエフェクター分子あり、その後個体の成長に伴い、分化の進んだNK細胞によるNK細胞レセプターにより制御されたperofirn依存性の腫瘍監視機構が獲得され、成体ではより強固な腫瘍サーベイランスが行われることを示した。さらに、TRAILを介した腫瘍細胞の傷害機構を癌治療へ応用すべく、TRAILの細胞死誘導レセプター(DR5)に対するアゴニスティック抗体(MD5-1)を作製し、この抗体を投与したところ、MD5-1の投与は、TRAIL感受性腫瘍を拒絶に導くのみならず、抗原提示細胞を効率的に腫瘍内に導き活性化し、腫瘍抗原の提示を増強することにより、T細胞依存性の腫瘍特異的免疫反応を誘導することで、速やかにTRAIL耐性変異株に対しても強い抗腫瘍硬化を発揮することを示した。これらの結果により、腫瘍サーベイランスにおけるNK細胞上のTRAILの意義のみならず、TRAILを介した腫瘍細胞傷害の臨床応用の有用性が示唆された。一方で、NKT細胞による抗腫瘍効果の発揮に、補助シグナルであるICOSが重要な役割を担っていることを示し、NKT細胞の抗腫瘍活性の発揮に関与する新たな分子機構を示した。これらの結果は、発癌抑制および癌治療に早期に応用可能な基礎的知見である。
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