研究概要 |
骨髄微小環境下において、骨髄間質細胞が癌細胞に及ぼす増殖促進、アポトーシス回避作用には、間質細胞が産生するサイトカイン依存性の経路と両者の直接的接触によるIntegrinを介した経路が関与する。本研究は、骨髄間質細胞と急性骨髄性白血病細胞の直接接触下では、サイトカイン(IL-6,LIF)依存性のJAK/Statシグナル伝達系とは異なるIntegrin-linked kinase(ILK)依存性のStat3活性化とそれに伴うアポトーシス抑制が起こることを明らかにした。このILK依存性のStat3活性化経路は、骨髄間質細胞と白血病細胞の直接接触条件下において、JAK/Stat3阻害剤やIL-6およびLIF中和抗体の存在下でもStat3活性化を促進したが、ILK阻害剤(KP004)暴露下では、Stat3の活性化は有意に抑制され、細胞増殖抑制,アポトーシス誘導が認められた。また、直接接触下において、PI3K阻害剤がStat3活性の抑制に作用したことから、ILK-Stat3シグナル伝達にはPI3Kが関与することが示唆された。さらに、骨髄間質細胞と白血病細胞の直接接触によって、間質細胞内においても同様のStat3活性化が観察された。これらの知見は、骨髄微小環境では、サイトカイン依存性のみでなく、Integrinβ-ILK経路を介してもStat3の活性化が生じ、白血病細胞の生存に関与すること、ILK阻害剤が骨髄間質細胞と白血病細胞の双方に対して抗腫瘍効果を発揮する可能性があることを示唆するものである。この結果については、2005年米国血液学会総会(サンディエゴ)で発表した。
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