SAGE法により、世界最大のSAGEライブラリーを完成し(GEO accession no. GSE545)、胃癌の発生・進展に関与する多くの遺伝子を同定してきた。胃癌SAGEライブラリーとデータベース中の主要な12種類の正常臓器のライブラリーとの比較から、癌特異的発現遺伝子候補をリストアップし、定量的RT-PCR法による実際の胃癌と正常臓器における発現解析により、少なくとも8遺伝子が特異的に発現することを見い出した。この中にはMIA(melanoma inhibitory activity)とGW112という既知の遺伝子が含まれていた。胃癌についての定量的RT-PCR法では、進行癌症例で有意に発現レベルが高く、MIA陽性例は陰性例に比較して有意に予後不良であった。ELISAにて測定した血中MIA値は、高度進行胃癌症例で高値であった。GW112は、胃癌の58%(29/50)において過剰発現(T/N>2)しており、悪性度と相関していた。 SAGEで抽出した164の特異的遺伝子に既知の遺伝子を加えたオリゴDNAカスタムアレイを用いて、20例の胃がん組織について遺伝子発現を解析し、T grade、N grade、Histologyなどを判別する有意な遺伝子群を抽出した。 また、SAGEライブラリーの比較から胃癌において発現が抑制されている遺伝子としてCLDN18を同定した。RT-PCR法によって胃癌では65%にCLDN18の発現低下が認められた。さらに、5'UTRにG/AのSNPの存在が見い出され、胃癌症例対照研究から、A/G及びG/G genotypeが胃がんの発生リスクに関連する可能性が示唆された。
|