アジア地域を中心として、HBV変異株の流行実態を調査した結果、preS gene変異株はベトナムでの検出率が36%と最も高く、次いでネパール(27.3%)、ミャンマー(23.3%)、中国(22.4%)、韓国(14.3%)、タイ(10.5%)、日本(7.7%)であった。高い検出率を示したのは、いずれもHBV浸淫地域であった。興味あるのは、これらの変異が肝疾患の進展と共に高頻度に出現する傾向が認められたことである。特に肝癌発生との関連が注目された。これらのHBV変異株の出現は、免疫応答逃避株として宿主と共存を図っているものと思われる。またcore遺伝子に変異を有すHBV株が肝癌多発地域であるベトナムにおいて流行している実態が明らかとなった。これらの所見は、HBV変異株と肝病態の関連を解明する上で重要である。さらに、ゲノタイプBとCのレコンビナントからなるHBVの流行様式を、PCR/RFLP法とsequenceにてスクリーニングした結果、タイ、ベトナムの調査では、ほぼ100%近くがB/Cのレコンビナント(ゲノタイプBa)であった。一方日本では、80%近くがレコンビネーションを示さないゲノタイプB(Bj)であった。現在両者の臨床所見相違を明らかにするため、患者のフォローを継続して行っている。ベトナムにおける小児肝癌の多くは、HBV(ゲノタイプBaかC)感染と肝硬変を伴っていた。
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