H.pyloriのGGT産生性およびその生化学的活性と胃癌との関連性を明らかにするため、症例対照研究を行った。症例は浜松医科大学病院において上部消化管内視鏡検査を実施され胃癌と診断された患者、対照は同じく浜松医科大学病院において上部消化管内視鏡検査の結果、正常もしくはH.pyloriとの関連性が示唆されていない疾患と診断された患者とした。なお、この研究をはじめるにあたっては、研究計画を国立感染症研究所および浜松医科大学の倫理委員会の審査に付し、許可を得たうえで実施した。 これまでに胃癌患者6名、対照患者6名よりH.pyloriを分離した。また、GGTの発現量の測定時にスタンダードとして用いるGGTを、大腸菌を用いて作成した。分離されたH.pylori株のGGTの発現量をWestern blottingにより定量したところ、株により発現量にばらつきがあり、菌体総蛋白1mgあたり2.33-5.69μgのGGT蛋白を発現していることが分かった。症例由来の株と対照由来の株の間では、有意差ははっきりしなかったが、症例由来の株の方が発現量が低い傾向があった。英国で分離された胃炎患者由来のH.pylori26695株のGGTの発現量は、菌体総蛋白1mgあたり13.00μgと、明らかに今回我々が収集した株よりも多かった。このことより、GGT産生量の少ないH.pylori株による感染は胃癌発症のリスクが高く、また日本のH.pylori株はGGTの産生量が少なく、そのことが日本において胃癌の罹患率が高いということに関連している可能性が考えられた。今後、引き続き症例と対照の数を増やし、また外国の株を収集し、GGTの発現量を測定し、そして酵素活性についても解析して、GGTの発現量と胃癌との関連性を解析していく予定である。
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