GemininはDNA複製のライセンシング因子であるCdt1と結合し、Cdt1の前複製複合体(preRC)との結合を阻害する分子である。GemininがAPCによって分解されることによってCdt1は遊離しpreRCと結合することによって複製が再開すると考えられている。 われわれはgemininノックアウトマウスを作製し胎生3.5日胚ですでに異常な形態をしめしていることを昨年までの研究で示してきた。そこで本年は、胎生3.5日胚の観察を継続すると同時に、コンディショナルノックアウトマウスの作製に着手した。 Gemininノックアウトマウス3.5日胚は、細胞および核の大きさが不同であり、また一つの細胞に複数個の核が観察された。さらにBrdUラベルによるDNA合成期の核を染色すると大小不同に核がいずれも染まり、また一つの細胞内でも複数個の核が複製していることが判明した。一方、抗リン酸化ヒストンH3抗体によるM期細胞の染色では、野生型には複数個の細胞が染まるもののgemininノックアウト胚では染色が見られなかった。 さらに受精後1.5日目に2細胞期胚を卵管より採取、培養を行った。するとgemininノックアウト胚は、4細胞期胚までは野生型と同様に増殖を継続するものの8細胞期で増殖を停止し、いったん観察される細胞間接着も低下することが判明した。このとき、抗geminin抗体で免疫染色を行うと、2細胞期胚では核内にgemininは染色されるが、ノックアウト胚では、4細胞期よりその染色性が低下し、8細胞期では認められなくなることが判明した。このことから、おそらくは母性由来のgemininが4細胞期までの細胞増殖を支持しているが、それがこの時期に消失すると同時に、過剰なS期の進行と共にM期の進行が阻害が生じていると考えられる。
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