研究課題
真核生物の細胞増殖は細胞周期と呼ばれる一連のプロセスを進行することによって起こる。細胞周期は厳密に制御されていて、増殖に不適切な状況下ではその進行を停止する。我々は、細胞壁合成欠損株の表現型を解析する過程で、細胞壁合成の停止が核分裂の停止を引き起こすという興味深い現象を発見していたが、細胞壁合成をモニターする新しいチェックポイント制御機構が存在することを予想し、その分子機構を解明するために本研究を分子生物学、遺伝学の観点から行った。その結果、グルカン合成欠損株はSPB複製後、紡錘体形成以前で細胞周期を停止することが明らかになり、グルカン合成停止によるG2期停止はClb2pの異常により起きることが明らかになった。細胞壁チェックポイントが誘導されると、CLB2の転写因子であるFkh1P, Fkh2Pにシグナルが伝達され、CLB2の転写を制御していることが変異株を使った研究から明かになった。さらに、細胞壁チェックポイントによるG2期停止にはダイナクチン複合体のうち、Arp1pだけでなく、Jnm1p, Nip100pなど全てが必要であった。グルカン合成欠損株だけでなく、グルカン合成阻害剤やmnn10Δ変異株によっても細胞壁チェックポイントが誘導されることから、細胞壁チェックポイントはグルカン合成だけではなく細胞壁合成全体、あるいは細胞壁の安定性をモニターしていると考えられた。さらに、arp1の部位特異的変異株を単離して、その耕造と機能との関係、特にダイナクチン複合体の「チャックポイント」と「核移行」の機能について解析を行った。以上の結果から、細胞壁チェックポイント機構は、有糸分裂を開始する前に、細胞壁合成が正常に行われ適切な大きさの芽が形成されることを保証していると考えられた。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
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