研究課題
申請者は、Lats2キナーゼのM期チェックポイントにおける役割について研究を行なっている。その過程において以下の成果を得た。(1)これまでにM期キナーゼAurora-Aが中心体においてLats2の83番目のセリン残基(S83)をリン酸化することを見つけていたが、新たにもう一つのリン酸化部位を突き止めた。S83のリン酸化が染色体凝縮の開始と同時に核内と中心体の両方で強くリン酸化され、核膜崩壊以降は中心体でのみリン酸化されるのに対して、新たな部位は中心体でリン酸化されず、染色体凝縮が始まると核内でリン酸化された後、前中期から中期までは染色体上で強くリン酸化され、後期に入るとミッドゾーンで強くリン酸化された。このことから、Aurora-AによるLats2のS83のリン酸化は中心体制御と核内におけるM期開始制御に関与し、もう一方のリン酸化は核内におけるM期開始とその後の染色体整列の制御に関与しているのではないかと考えられる。(2)過剰発現させたGFP-Lats2は核内に局在せずに中心体と細胞質全体に局在するが、ExportinのひとつであるCRM1に特異的な阻害剤レプトマイシンBで細胞を処理すると、GFP-Lats2は核内に集積した。このことから、Lats2の一部はCRM1経路を利用して強制的に核内から核外へ排出されて中心体に移行している可能性が考えられる。(3)LATS2ノックアウトマウスの作製を行なった結果、ホモ欠損アウス(LATS2^<-/->)は胎生致死であることがわかった。さらに、LATS2^<-/->の胎児由来線維芽細胞(MEF)では、細胞増殖速度の増加と中心体の過剰増幅、スピンドルの異常が認められた。これらの結果は、Lats2が中心体の複製・成熟と正常なスピンドルの形成に関与して細胞増殖を負に制御していることを示唆している(投稿準備中)。現在、その詳細な分子メカニズムを解析している。
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Genes to Cells 9・4
ページ: 383-397
Genes to Cells (印刷中)