細胞周期において、染色体の複製が正確に、そして一回のみ行われることにより遺伝情報が維持される。我々は、分裂酵母においてライセンス化因子Cdc18とCdt1の高発現が、過剰複製を起こすことを発見した。さらに、ヒト細胞においても、N末を除いたヒトCdt1は、非常に安定化して高発現すると、4C以上のDNAを有す細胞が誘導されることを示した。そこで、Cdt1タンパク質の分解制御が、ゲノムの維持において重要な働きをしていると考え、その分解機構の解明を行い、次のような結果を得た。 1、細胞周期のS期に入ると、Cdt1はユビキチン-プロテアソーム系により分解される。G1後期からS期にかけて機能するSkp2-Cul1ユビキチン化因子が、Cdt1に結合することから、この因子により分解されると予想した。しかし、Skp2ノックアウト細胞、siRNAでSkp2の発現を抑制した細胞においても、Cdt1が分解されることが分かった。Cdt1のN末32アミノ酸を持つ領域を9myc融合タンパク質として発現すると、本来なら安定な9mycタンノミク質が、S期で分解されるようになることから、この領域にS期における分解に関る配列があると結論した。 2、細胞をUV照射するとCdt1が、素早く分解されることを見つけていた。さらに、DNAアルキル化剤MMSや酸化剤menadione処理によっても、分解がおこることを確かめた。DNAダメージにより活性化されるDDB1を含むユビキチン化酵素複合体の関与を調べるため、siRNAによりDDB1の発現を押さえるとCdt1の分解が抑制されることが分かった。さらに、Cdt1のN末32アミノ酸領域にこの分解に預かる配列が存在することを明らかにした。同じ領域が、S期における分解に関るが、DDB1の発現を押さえた細胞でも、分解されることから別の因子の関与が示唆された。
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