研究概要 |
細胞周期の過程において、安定に染色体が娘細胞へ分配されることは、生物にとって最も基本的かつ重要な性質である。染色体の不安定性を防ぐために、細胞は様々なチェックポイント制御機構を備えており、スピンドルチェックポイント機構は、M期進行において中心的な役割を担っている。我々は保存されたセントロメアタンパク質Nuf2に注目して、Nuf2がHec1と複合体を形成して、M期でスピンドルチェックポイントタンパク質Mad2と結合することを明らかにしてきた(J.Cell Sci., 2003)。昨年度までの研究において、Nuf2-Hec1複合体の機能解析とNuf2複合体と結合するタンパク質群の探索を行い、Hec1は、構成的セントロメアタンパク質であるCENP-Hと相互作用することが明らかになった。本年度は、iFRAP法を用いてHec1の安定性を調べた結果、Hec1はG2のセントロメアでは、ダイナミックな挙動をとるが、M期のセントロメアでは、安定した構造をとって、Mad2複合体と相互作用することが明らかになった。このことより、Nuf2-Hec1複合体は、チェックポイントタンパク質と構成的セントロメアタンパク質を結びつける働きを行っていることが示唆された(Mol.Cell.Biol., 2005)。また、プロテオミクスを用いた多様な解析からNuf2-Hec1複合体が、CENP-Hの他にMis12複合体という他のセントロメアタンパク質や、ダイニンのサブユニットとも結合していることが明らかになった。今後は、Nuf2-Hec1複合体のタンパク質として機能あるいは活性の解明が、セントロメアにおけるスピンドルチェックポイント機構制御の解明につながると思われる。
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